2014年7月9日水曜日

マーケットデザイン 最先端の実用的な経済学、という本を読んだ。



日本人は「ものづくり」という言葉を好みます、

それは、おっしゃる通りだと思います。

そうやって日本の製造業は盛り上がって、

経済成長してきたからである。

そもそもマーケットデザインとは何かという疑問があるが、

これは「経済学的ものづくり」に関する立派な学問なんだという。

まず優れた製品を作ったり改良する、理工学的ものづくりという概念があって、

その優れたものを有効活用してくれる人の手にどうやって渡すか、

その製品としての価値を生み出し社会を豊かにするか、

ということを考えるのが経済学的ものづくりの概念である。

その具体例として取り上げられているのが腎移植マッチングと学校選択マッチングである。

腎移植マッチングでは組み合わせのアルゴリズムについて、かなり詳細に解説している。

これは複数の腎臓病の患者とドナー達の中から血液型の適合性の観点で

適合ペアを作り出すというものである。

驚いたことにこれは当たり前に行われているのかと思っていたのだが、

ドナーを交換するという発想は画期的発明レベルなんだという。

そして、91年に世界で初めて行われたのだそうだ。

その後、99年には移植した腎臓の生着率が高いことを

とりまとめた論文が学術誌に掲載されたようである。

当初はマッチする組み合わせることを考えなかったとは、実に謎めいている。

次に、学生寮の今住んでいる部屋より、望ましい部屋を選ぶアルゴリズムについて、

こちらも非常に長々と解説されている。

ちなみにこのアルゴリズムはゲールによるTTCアルゴリズムという。

これによって求められる解は、強コア配分といって、バランスよくみんなが

満足できる結果になるとのことだ。

さらに続いて大学入学と男女のマッチングについて別のアルゴリズムを

これまた詳細に解説している。

ここまでアルゴリズムの話が本当に長く続くので、

難易度が高く飽きてきてしまうかもしれない。

そんな時はオークション理論の所までスキップすることをおススメである。

あとがきでおもしろいのが、犬と暮らすのにあんなにお金がかかるとは

知りませんでした、という一文である。

実際にやってみてわかることだが、犬、猫どちらであっても、その他ペットを飼うということは、

人間の感情を育むとともに、非常にお金のかかるものなのだ。

しかし、マッチング理論とオークション理論ともに総じて言えることは、

学問とはあれこれ様々な仕組みを考え出すものなのだと感心してしまう一冊である。






2014年7月3日木曜日

フリーで働く前に!読む本、という本を読んだ。




今今独立起業ということを思い描いているわけではないが、

会社で仕事をしていくうえでも「個」の力はとても重要だと

認識しているし、そういった力をつけるためのヒントが

得られるのではなかろうかと思って借りてみた本である。


その内容は会社を辞めてフリーになればこんなに稼げます。

そのためのノウハウをお伝えします、さぁ今すぐ始めましょう云々

みたいな有りがちな話ではない。

その点は少し意外に感じたとともに、準備ができるまで己の武器を鍛え続けなければ、

まちがいなく失敗する。

できれば今のままを維持した方がよい、独立起業はそんな甘いものではない、

この世界を舐めたらアカンぜよとまで言い切っているので、

キチンとした構成になっているのではないだろうか。

メリット、デメリットを明らかにしないと信用は得られないというのをどこかで見たことがある。

そしてまずは、とりあえずは有名なソリストたれ!に始まる。

やはり近頃の流行りは、個人で稼ぐ力をつけるということか。

本当に力があるならば、何をするか?どうやって生きるか?ということは

自分で自由に決めることができる。

この自分主体の生き方を可能にする力を「自在力」と定義している。

また、自由の定義も格好がいい。

「自由とは、好き勝手に生きることではなく、いつでも決断できる準備が整った状態のこと」とある。

そして後の章では肝心の自在力についてをより具体的事例とともに解説している。

特におもしろいのがWebサイトのアクセス数を減らせ、無駄なSEO対策は不要であるという、

これも今流行りとは逆行する提案で成果が出たということだ。

目標は持つな!とは一見何だそれ、と異論を唱えたくもなるかもしれない。

しかし、実は収入を増やす!などという目標っぽい欲は、ただの状態であると述べている。

なるほど確かにそう、収入を増やした後にどうするか?

どういう自分でありたいかというところまで踏み込んで考えなければならないのだとわかる。

そうやって目の前にあることを一つ一つ確実にこなし、

社外でも通用する「技」を身につけなければ、

この先到底結果を出すことはできない。

会社という肩書がなくても、自分の強みをしっかりとアピールしないと

やりがいのある重要な仕事を得るというチャンスすら掴むことは難しい。

あとどうしても必要になってくるのが人脈である。

イザという時の頼みの綱は、やはり手を差し伸べてくれる人だとある。

人との繋がりがなければ、意味がない。

まとめとしては、少なくとも自分名刺は作った方が良さそうな気がする一冊である。






2014年6月25日水曜日

戦略参謀 経営プロフェッショナルの教科書、という本を読んだ。


随分厚い本だと思ったら、あとがきにビジネス書に

換算すると2冊分のボリュームと書いてあった。

しかし、構成が一般のビジネス書とは異なり、

現場を描いたストーリィ形式だったので、読み進めるうちに

どんどん続きが気になってしまい、一日のスキマ時間を全て

駆使して一気に読めた。

あらすじは、紳士服チェーンの若手営業マンが、経営幹部がいた

朝礼で現状の給与制度の問題点について空気を読まずに発言してしまったことから、

経営企画室という部署に飛ばされるも、そこで出会った素晴らしい上司と、

その知り合いである敏腕コンサルタントの二人によって支えられ、

会社を改革しながら成長して行くというストーリィである。

そもそも組織とは、分業のため仕事の責任範囲を明確にするためつくられたものとある。

そして事業の成功と成長のためPDCAサイクルを繰り返して行くうえで、

当然トップの考える仕事であった企画も分業して行うことになる。

本書ではこの企画についてとりあげ、重点的に解説していく構成になっている。

なお、重要な部分は太字になっているのでそこはキッチリと押さえておきたい部分である。

企画の定義について紹介すると、

「目的を明確にし、現状を把握したうえで、そこから、目的達成のための意味合いを抽出し、

成功のための仮説を立て、実行案を組み立てるという一連の動作」とある。

これは、たとえば資格を取得するまでの勉強方法であるとか、流行り?のインターネット

ビジネスについての取り組みであるとか、日頃の自分たちの行動についても、自然と

同じプロセスを適用しているのではないかと思った。

また、各章の終わりには、解説としてまとめが載っており、さらに理解が深まると思った。

特に印象的だったのが、PDCAをサボってしまう要因として、

「人、性善なれど、性怠惰なり」があるということだ。

まさに本質を捉えた言葉で、中々自分自身を律するのは難しいことがよく分かる。

ところで、本書ででてきたキーワードの『企業の憑き物落とし』であるが、

憑き物落としといえば、京極夏彦氏の小説の安楽椅子探偵京極堂ではないだろうか。

結局、京極堂も最後は表舞台に登場するが、今回の経営コンサルタント(兄)も同様、

最後には出張って、紳士服チェーンに潜む数々の問題を名探偵ぶり!?を発揮し、

解決していくのであった。

本来、もう少し前の部分から登場するのかと思いきや、まさかの経営コンサルタント(妹)が

登場するという驚きの展開である。

話の流れから兄の秘書兼家事手伝いみたいな位置づけかと思っていたが、

主人公同様おおいに裏切られた部分である。

そして彼らの活躍で新規事業も大成功に終わり、この紳士服チェーンの経営は

見事建て直されたのであった。

ただ、最後の主人公と経営コンサルタント(妹)との怪しい雰囲気の件があると

またも続きが気になってしまい、個人的にはない方がスッキリ大団円だったような

気がして仕方がない一冊である。





2014年6月19日木曜日

イノベーションは新興国に学べ! カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力、という本を読んだ。



イノベーションとは、先進国から起こるものではないのか、

そんな思いがありながらも、一体その根拠は何だろうかと

思いつつも借りてみた本である。



表紙を開くと、いきなりカルロス・ゴーン氏の刺激的かつ

心躍る一冊という推薦文があって、それはもう期待大である。

ビジネスにおいてアイデアと創造力は何よりも重要である。

今や何に使うんだというものや、一見こんなものがと思ってしまうモノを

少しの工夫を付け加えるだけで立派なビジネスとして成り立つ例は多数ある。

それを展開するべく本書でいう新興国とは具体的にはフィリピン、インド、ブラジル、

中国、ケニアなどが挙げられる。

そして再三出てくるジュガードという言葉、パッと読んだだけだと

ジュガードイノベーション、ジュガードイノベーター、一体何の事かが分からない。

新しい取り組みを始めた第一人者の名前か何かだろうか?

答えはヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」とか

「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味があるようだ。

リーダーの即断即決とでも捉えればいいのだろうか。

このジュガードをビジネスに取り入れるときに先進国が学ぶべき6つの原則と

いうのが紹介されているので、ここでも挙げておきたい。

1.逆境を利用する

2.少ないものでより多くを実現する

3.柔軟に考え、迅速に行動する

4.シンプルにする

5.末端層を取り込む

6.自分の直感に従う

の6つである。

これは、特にあまりビジネスマインドが身についていない者がこれを考えると

4番でいきなり難しく考えすぎて高いハードルにチャレンジしたり、

6番あたりで間違った選択をしてしまいそうである。

事実そうかもしれない、直感に従ってみるとだいたい間違っているのが大きい気がする。

だが、ここではそのひとつひとつを実例とともに優れた点を説明しているので、

確かにヒントは掴みとることができそうである。

安く失敗し、早く失敗し、何度も失敗する。

実験実験、また実験。

うまくいきそうもないことが分かったらすぐに別の方法を試してみる。

さらに進んで色々な方法を試してみる。

要するにこだわりすぎて時間がかかってしまった挙句、

成果が出ないとか、期待値よりもずっと低いということは避けたいという思いだ。

そういえば最近思い当たる節があったような気がするので、

これは自分には戒めとしてとどめておきたい点である。

そういうわけで、やはり思うのが、日本国内という狭い枠だけでなく

世界を相手にビジネスモデルを展開し、成功へと繋げていく必要を強く感じさせる一冊である。



イノベーションは新興国に学べ! ―カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力

2014年6月12日木曜日

「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい 正義という共同幻想がもたらす本当の危機、という本を読んだ。



タイトルからは、電車で表紙が見える状態では

読みたくない本というマイナスイメージを抱くかもしれない。

しかし、カバーなどで表紙を隠すことは著者に失礼である

という、どこかで見た話を真に受けそのまま読み続けた。

それで、内容はどれもかなりおもしろい本であると感じた。

まず、読んでいて何だかこの論調は誰かに似ていると感じた。

森達也氏と森博嗣氏、森繋がりというだけで何ら関係はないが、勝手にそう思った。

しかし、それがどこかおかしいと思いつつも、そのままにされている世間一般の事柄に対し、

彼らはキッチリと言うべき事は指摘する点においては共通するのではないかと思った。

本書は雑誌!?の連載記事まとめらしく、短い記事が盛り沢山という内容になっている。

担当編集者の笠井一暁氏もかなりのキレ者と推測される。

殺人事件の加害者を死刑にするのは、正しい選択であると言えるのか。

また、被害者の人権はどうなるんだ!という怒りの声に対し、

それは違うという至極冷静な意見であった。

被害者や遺族の気持ちを代弁するのではなく、感情に寄り添うことこそが必要なのだとか。

「この人は辛いんだぞ!なんでわかってやらないんだ」と第三者の気持ちを

代弁することなどできるわけがないなどと、深い話である。

そして死刑制度が被害者遺族のためにあるとするならば、

天涯孤独な人が殺された場合は、その犯人が受ける罰は軽くなっていいのかという質問!

こういう考え方をみると、どうしてもワクワクしてしまうのだ。

これも印象に残っているのだが、領土問題の解決策として譲歩という選択について触れている。

もちろんタダでやるわけではなく利益を分配すれば、少しばかり狭くなったとしても

かまわないというスタンスをとれるのだという。

そして、こういった意見に対しての罵倒が多数あったということも明らかにしている。

ところでネットでの中傷するキーワードとしては、

「このバカ」や「カス」とか「死ね」がダントツで多いようである。

どうにも著者は本当によく誹謗中傷されている節があった。

ブサヨって何だろうと思ってしまった。

ちなみに答えはブサイクとサヨクを合わせた言葉らしい。

ピカチュウ、キティと読ませるキラキラネームの話、スリッパについて篤く語っていたりとか、

市役所での身分証明エピソードとか、原子力安全神話、特別警戒と職質やら、

とにかくたくさんあるテーマについて随所におもしろいところが見受けられ、

ドキュメンタリー映画も見てみようかなどど著者に対して俄然興味が湧いてくる一冊である。





2014年6月3日火曜日

世界で一番わかりやすいニッポンの論点10、という本を読んだ。



前回読んだ規制改革の本と若干内容が被っている部分もあり、

復習という意味でも問題の再認識に役立つ。

アベノミクスとは、結局オーソドックスな金融政策・財政政策を

やっているだけだという。



果たして、デフレ脱却で日本経済は甦るのかどうか。

それにしても結果が出るまでの2年待ちは長い。

本当に景気が回復したと実感できるか、それとも消費税増税によって、

またもや逆戻りとなるのか、何が正解なのかという結果はやってみないと誰にも分からない。

それはさておき、論点を読みながらも興味深いと思ったところを挙げておく。

まず激しく同意の格付けの話がある。

日本国債に不安はない、格付け機関の格下げに慌てるなとある。

確かに、格付け機関が何を根拠に日本の評価をしてるんだろうかという点は

ずっと疑問に思っていた。

やはりそれほど価値のある情報でないという認識は正しそうだ。

どうも報道に踊らされている感があるような気がしている。

そして次に、ここでも出た、医薬品のネット販売についての規制改革の話。

この本によると基本的には諸外国では認められているという。

ネット販売はトレーサビリティが高いため、万が一の不具合対応もできることから

対面にないメリットがあるのだとか。

但し、購入者と使用者が異なることもあるだろうから、その場合は

どうなるかは気になるところではある。

さらに、本書の中で在り方に疑問を感じたのが、電力問題の既得権益の話である。

日本の電気料金は、燃料費や人件費など費用に報酬を加えて設定する

総括原価方式なので、諸外国と比べて割高なのだという。

よって地域独占で原発を作れば作るほど電力会社が儲かるという

おかしな仕組みが成り立ってしまうのだ。

天下りに腐心する官僚がそうさせている、許しがたい事実である。

イザとなったら電気料金を値上げすればいいなどという理屈はあり得ない。

電力自由化はぜひとも実施しなければならない改革の一つのようだ。

あと意外な事実として知った日本の領土は世界61位なのに、

排他的経済水域を含む管轄海域面積が6位というのがある。

それだけ広いなら何か資源が取れそうなものだが、などと思ってしまう。

そんなわけで、日本の論点10個それぞれに対して

問題解決がいち早く求められていると感じる一冊である。
 




2014年5月28日水曜日

規制改革で何が変わるのか、という本を読んだ。



世の中は規制だらけ、こうした制度も

ずっとそのままでいいかというと

それは間違っている。

なぜなら作られた時期に都合がいいような内容になっており、

時代の流れとともに大きなミスマッチが生じている。

そのためこれらの変化に追随するよう見直していかなければならないということが趣旨である。

本書によると、日本には規制改革は格差を拡大させるという常識が

蔓延しているようなのであるが、果たして本当にそうだろうか。

弱者どころか強者をよりいっそう待遇しているようにしか感じられないのだがどうだろうか。

真に弱者を守っている規制なのかを解き明かしていく内容になっている。

具体的に規制改革をするとはどういうことか。

それは市場競争を阻害する規制の撤廃および雇用保険、生活保護といった

社会的安全を効率的に行うこととある。

まずは優先度的にも高いであろう雇用、食の問題にかかわる農業、

サービスの質を考えるべき医療、社会福祉のあり方を考えたい介護と保育、

デキる人を育てるための教育、そして住むところも大事である都市・住宅というように

広範囲に亘って現状の問題と改革内容についてを論じている。

中でもおもしろいと思ったのが、期間の定めのない雇用とは何かである。

これは労働者はいつ辞めてもいいが、企業サイドからは定年退職まで

解雇できないという契約であるという。

これは一見すると、労働者よりも企業側が立場が弱いような気がした。

もちろん業績次第でYou're fired.もあるだろうし、労働者側で社会的問題を

起こすような例外はこの限りではない。

あとは医療のところで、どうせならもっとしっかりやるべきだと感じたのが、

医薬品の販売についてである。

現在コンビニなどでの一般小売店での大衆薬販売は一部に限って許可されている。

しかし体内に入れる薬以外も登録販売者の資格がないと販売できないというのだ。

だからせっかく24時間営業でもバイト主体のコンビニでは販売できないという

実質意味のない規制緩和である。

ここは欧米を見習っていつでも買える風邪薬とかオロナインのように

ぜひともなってもらいたいものである。

また教育の規制改革では、なぜ大学は三年間で卒業できないのかについてである。

今は特に優秀な大学生だけが早く卒業できるという扱いだか、

これを生活に困っており、少しでも早く就職する必要のある私立大学生にも

当てはめれば年間100万を節約できるという効果があるのだという。

確かに3年で卒業できる単位数は取得可能だし、優秀な人間をいち早く社会に

出すことができるというメリットもあると思う。

そういうわけで、他にもコラムの部分に読みどころがあるような

気がする一冊である。



規制改革で何が変わるのか (ちくま新書)

2014年5月22日木曜日

消費税政 と官との「十年戦争」、という本を読んだ。




ついに始まった...の消費税の増税までの

長い道のりは、普通のサラリーマンには

到底想像できるようなものではない。


その裏側を克明に描く本書には大いに驚かされる。

小泉内閣から野田内閣の近いうち解散の結末まで、

時には政治家の話し言葉そのものまでもがとにかく詳細に記載されている。

あとがきにもあるように、筆者の綿密な取材と本当に多数の証言で

作り上げられたということが分かる。

ところで「近いうち」という言葉は、はっきり決められない日本人の

曖昧さを表現している言葉のような気がしている。

事実、本当にいつ解散なんだろうと、見ているこちらまでが

イライラさせられたものである。

「私の首相在任中は消費税を上げない。なぜなら歳出に削るところがたくさんある」と

発言した02年の小泉内閣。 しかし、郵政民営化の記憶しかない。

この当時から社会保障目的税化の議論はずっとあったのにもかかわらず、

プライマリーバランス均衡を声高に叫びながら、

選挙に勝つためだけのパフォーマンスを続けてきたのかと、

やはり残念な気持ちを抱かずにはいられない。

実は、これは長年に渡る失意の茶番劇なのではなかろうか。

その途中でおもしろかった部分は、与謝野氏に七年前にさかのぼって修正申告し、

追加納税するのは脱税だ。こんなに多額の脱税をした人はいない。

まさに平成の脱税王と言わしめた鳩山氏。

それは本当に多額の子ども手当である。

また、ずっと後の部分に「どじょう宰相」の名言があるので、ぜひ紹介しておきたい。

「苦しいから次の政権に任せよう、消費税増税はいつか決めれば

いいという議論が続いてきたが、もう猶予がない。

この困難な時期に首相を引き受けて、子や孫のため決断しなければ

いけないことから逃げるつもりはない。

政権与党は一番つらいテーマ、苦しいテーマから逃げないことだ」

そして、確かに逃げずに増税法案は可決した。

また、一度は投げ出したにもかかわらず、それでもなれるものかと

ものすごく意外に思ったのが、第二次安部内閣が発足したということだ。

結果、世の中はいい流れに向かったということもまた。

あと、これは余談ではあるが、まれに難しい漢字で読めない人名というのがあった。

小説ではないが、カナが振ってあっても...

ひょっとすると日頃難しい事を考えている人は、難しい名前だったりするのかもしれない。

それにしてもやはりどう考えても納得できないのが、ジョジョに保険料が上がっているし、

残業代も標準月額報酬に含まれるため取られすぎではないだろうかという

年金制度の問題がある。

その上、現行よりも給付水準が下がるとは一体どういうことか、と。

最低保障年金の月額7万円という数字は何をもって算出されたのか、と。

負担するばかりで、実態はマボロシ保障のためのものか、と。

そして、最後に読み終えて思ったのが、タイトルにあった政と官の

どのあたりが「官」の部分だったのかが全く気づけないほど、

ひたすら政の話が続いていた気がしてならない大長編の記録の一冊である。 



消費税 政と官との「十年戦争」

2014年5月17日土曜日

「思考」を育てる100の講義、という本を読んだ。



ミステリィだけに、どとまらず著者の作品は

色々読んでいるような気がしている。

そして気づいたのが、このエッセイがおもしろいということだ。



昔は、推理小説の作家は人気シリーズだけを書いていれば

良いのだと言う勝手な理屈を唱えていたものだが、最近は段々と

いいものに気づけるようになってきたような気がしている。

この本が特に読みやすいのは100講義それぞれがとても短く

連続した話ではないので、スキマ時間に軽い気持ちでドンドン読み進めていける。

実は周囲にこんな本売れないでしょうと言われたらしい。

しかも本人ですら力を入れて売ろうと思ってすらいない点がまたおもしろい。

100個もあるから迷いどころももりだくさんではあるが、その中で特にオモシロかった

おススメの部分を紹介させていただく。

時間は財産である。

カネでは解決できない問題も時間で解決することもあるという。

時間持ち(ここでは主に若者で定義されている)のほうが価値があって、

憧れの対象にもなり得るというのである。

どれだけ持っているか分からないし、少しずつしか使えないものをどう使うか。

それはカネとともに大事な事であるのは間違いない。

また、意味があることを考える無意味さの話も、斬新さを感じずにはいられない。

意味がないという言葉の使われ方の指摘も鋭い。

やはりモノ書きの言葉の使い方の指摘は「ヤバイ」。

ヤバ過ぎ(笑)なのだとか。

この話もおもしろいので必読である。

最後の方に毎日コーヒーを飲んでいることの話があって、

おいしいコーヒーを飲むためのコダワリも述べられていた。

自宅でおいしく飲めるから喫茶店にも行かないらしい。

ただ、個人的には、毎日のように飲んでいる缶コーヒーの方が

家で淹れるコーヒーよりも断然ウマい気がしている。

ちなみにブラックコーヒーが百薬の長と言えるか、

その理解は正しいのかを検証してもらいたいものである。

もちろんそれは全うな機関に。

あと最後になぜコーヒと書かないかという点について触れている。

これは馬鹿なことらしい、しかも理由を答えないというイヤらしさである。

アクセサリィとかエネルギィと書いてみたり、オーバーではなくオーバだとか、

マイナと書いたりとか、ツイッターをツイッタとしたり

こんな書き方は読み手からすると非常に違和感を覚えずにはいられない。

それはなぜなのか、ここだけは是が非でも解明させたいとともに、

そこまでの拘りがあるのならば、せめてコーヒィとでも書いてもらいたいものだ、

と思わずにはいられない。

そして、ただし奥様(あえて敬称)というフレーズが出すぎなので

かなりの愛妻家であることを感じる一冊である。




2014年5月15日木曜日

今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい アナログ回路の本、という本を読んだ。



トコトンやさしいという点について

実際どうだったのかというと、

正直なところこういった技術的な本はかなり難しい。



しかしデジタル化時代でもなお、アナログを使わないことはない。

特にオーディオ関連はそうではないだろうかと思う。

それにマイコンを極めし者を目指すのなら、アナログ回路を知っておかなければならない、

という思いから借りた本である。

それに惨敗続きのエンベデッド試験においてもこの辺りの知識を補完する事で、

ついに合格できる時がくる、かもしれない...

さて、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の人間の五感についてだが、

これらはすべてアナログでしか認識できないのだという。

確かにあらゆるデジタル電子機器は人間との接点はアナログなのである。

テレビ映像、ラジオなどの音声、スマホのタッチパネル操作、

これらを考えれば確かに納得できる。

今こうして書いている記事も、キーボードに触れてアナログ入力した文字が

デジタルデータに変換され処理されている。

パソコンは0、1の2進数のデジタルデータしか理解できないのだから当然だ。

そして、それがテキストエディタ上で文字として人間に理解できるように

再びアナログ変換され出力している、と、これはよくよく考えればスゴイ事である。

そんな技術の発展についての分かりやすい説明と理解が目指すところだ。

その中でおもしろかったところを紹介しておくと、音と波の部分と

そしてやはりコラムのところに注目したい。

まずは波といえば高校以来のサイン、コサイン三角関数だ。

当時は同心円とサイン波の関係とかさっぱり理解できなかったが、

振幅と波長と周期で音程と大きさに関連していることを合わせて考えると、

今更ながらに腹落ちする。

こうして断片的な情報が繋がって納得できるような勉強の仕方を

義務教育のうちに身に付けられる仕組みづくりが必要だと思う。

次にコラムの部分では蛙の足の筋肉収縮から生まれたボルタの電池、

何とかして電気を貯めたかったという実験から生まれたコンデンサや

数々の失敗から生まれた抵抗、オームの法則、電話器やテレビの発展に

大きく貢献した真空管の話など、こうやって先人の英知の結晶の恩恵に

与っていることに思いを馳せずにはいられないけれども、

後半になればなるほど専門性が高まってくると感じる一冊である。




2014年5月13日火曜日

みんなの経営学 使える実践教養講座、という本を読んだ。





これからは一つの会社で定年まで

ぶら下がっていられる時代はもう終わった。



そんな思いがあると、自分ひとりで稼ぐ力を身に付けるためには

やはり色々な事を積極的に学んでいかなければならない。

もしかしたらゆくゆくは会社を立ち上げるなんてこともやるかもしれないし、

そのために経営学は勉強しておく必要があるのではないかということで借りた。

如何せん良く分かっていないのだから、これも一つの改善になる筈だ。

そういえば、あのドラッカー曰く、マネジメントは一般教養であるのだとか。

それは自分の考えを働かせ、物事を正しく判断するための基礎となる知識であるという。

言うなれば、自分の価値観または色眼鏡といったところだろうか。

そして、経営学はなぜ必要かから、職場でやる気を起こし楽しく働くための

モチベーションについても論じている。

ちなみに現在のインセンティブ代表格はカネになるそうだ。

それは、当然といったところではないだろうか。

人はカネのためだけに働くのではないとわかってはいても、

やはり現実問題カネは必要なわけで、あればあるだけ欲しいもので、

いくらあってももっと欲しいとキリがないとても厄介な代物なのだから。

このカネというものは人類最大の発明品になるようだ。

相手の欲しいものがなくても、カネを使えば自分が欲しいものを持っている人に対し

交換が成り立つことやほとんど永遠に蓄積できることが理由として挙げられている。

あとこの本で一番興味が惹かれたところは、経営戦略策定のための

基本的な理論とツールの章であった。

勝間和代女史お得意のフレームワークが紹介されている。

具体的にはSWOT分析、PPM分析、3C分析や5フォース分析、コア・コンピタンスである。

これらは情報処理の勉強でも何度も出てきてはいる言葉であるが、

そういったテキストではどうにもイマイチ分からないと思っていた部分があった。

しかし、本書を読んでほんの少し理解できたようなきがする。

そしてこれはぜひ考えたい部分が経営戦略の二つの挿話についてである。

一つはハンガリー軍の生還について、もう一つはトナカイの骨で狩場を

決める部族の調査結果についてである。

この話のまとめは、それは結果に結びつく確かなものではないが、

一つの過程として現場が落ち着きを取り戻し、新しく見えたものに対して

軌道修正していくことを繰り返せば、最終的に良い戦略となって

成功がついてくるというものだ。

いかに人を動かすかという経営学に馴染みがないと、

大半が頭に入ってくるような話ではないのだけれども、

孫子の兵法の真の意味を読み解いていたりとかの部分は

とてもおもしろい一冊である。



2014年5月2日金曜日

「日本経済」はどこへ行くのか2 再生へのシナリオ、という本を読んだ。



前回の1 危機の二〇年に続いて

随分と時間がかかったけれど

やっと読み終えることができた一品、

さすがの第2巻である。

例によって驚きな点を挙げておくと、

最初のところでドラッカーさんに叱られるという部分がある。

ビジネスの世界では知らない人はいないあの有名な

思索家であり経営学者のことである。

まさか著者がドラッカーと知り合いだったとは...

1979年代末以来のかなり長い付き合いがあったのだという。

きっかけは「見えざる革命」の著作を読んで感銘を受け、

自宅を直接訪ねたことから始まったのだとか。

本を読んでから筆者に会ってみたいと思う人はそうそういないものだと思う。

しかし、それでも良書との出会いが羨ましくもあり、

かつ実際に会いにいった行動力はとても素晴らしいと感じた。

おそらく3類型の心理学に当てはめると赤タイプの人だろう。

またこの行動については、外国にいたからこそ実現できたのだろうか、

日本ではまず自宅を訪れることなどできないだろう。

きっと編集部とかに掛け合っても個人情報の観点からまず自宅は教えたりしまい。

ファンレター辺りからはじめるのが無難なところか。

その他におもしろいと思ったポイントを挙げておくと

もう140年近い歴史のある日経新聞の生い立ちだとか、

FTA(自由貿易協定)と絡めたTPPの話、

高齢者の定義の話やアベノミクスには欠かせない黒田日銀の話がある。

その中でも特に見ておきたいのが、

これからの日本を考える上では避けては通れない高齢者の問題だ。

経済が活性化しやすい人口ボーナスの時代が終わり、

現役世代が非常に苦しい人口オーナスの時代に移行していっているのだ。

こうなってくると、そもそももう65歳は高齢者としては扱えない。

何しろ人間は70歳ぐらいまでは、言語力や問題解決能力が

向上するというデータもあるくらいだ。

退職後のおよそ10万時間という自由時間を

どう使うかを考えていかなければならない。

ちょっとした風邪とかで無駄に病院に行ってしまうような

ことは断じて避けなければならないのだ。

しっかりと健康を確保して、終末医療や介護を要する年数を

できるだけ短くする努力が必要である。

今後必要となってくるのは、多様な働き方と

学び直しができる再挑戦できる社会である。

誰もがいつでも能力開発できるようになっていないと、

若者だけがシワ寄せをくらうという何とも割りの合わない結果になってしまう。

そんなダイバーシティを重要視する超高齢化社会、超長寿社会において、

バラマキではなく種まきをしていくことで

次なる新しい成長や活力を生み出していかなければならないと感じる一冊である。


2014年4月26日土曜日

仕事のアイデアはみんなドラえもんが教えてくれた、という本を読んだ。





著者紹介に写真が載っていると、

読んで抱いたその人のなりのイメージと照合できて、

とても助かるような気がする。



自称リアルのび太というだけあってか、

見た目もちょっと似てるような...

さておきまずは意外なタイトルからだ。

たかだかマンガからそれほど学ぶべきところが

あるのだろうかと疑問に思うかもしれない。

しかし、これは凄いと思えるのがちゃんとドラえもんのひみつ道具と

リアルビジネスとの結びつきをしっかりと説明しているので、

もう間違いないというところだ。

おそらく本当に何回も読み込んで物語の本質を掴んだのではないだろうか。

誰もがアニメを観たり、

読んだことのある馴染み深さから余計にストーリィに引き込まれる。

何といっても実は非凡な才能を持ち合わせていたという

のび太の分析が面白い。

しかもリーダーシップ精神にあふれているらしい。

個人的にはそんな気はしていないのではあるが。

しかし、話を見ていくと確かにちょっとした工夫をしていたり、

実は商売のセンスもいいのだと感じることはあった。

ところで、これからの日本に必要とされる人材は

どんな種類か考えたことはあるだろうか。

本書では今6種類のビジネスマンがいると分類している。

それは

1.アベレージマン、
2.スペシャリスト、
3.マーケッター、
4.レボリューショナー、
5.キャプテン、
6.キャピタリスト

である。

やはり稼げる力のある人は3番以降のスキルを持ち合わせているようである。

この力をつけるための発想力に、

ひみつ道具を活用してみて「もし〜なら・・・できるのに」という

仮定法過去時制の人々の悩みを解決していこうというのが趣旨である。

これをみると今あるヒット商品もすべてが全く新しいものというわけではなく、

何かをアレンジしたりこれまでの仕組みを変えただけのものであったりとか、

ブームが過ぎ去った既存品でさえもツボを押さえたホンの少しの工夫があるだけで、

たちまちモノが売れるようになるというのがよく分かる。

こうなるとたとえ消費税が10%になったとしても、

どこ吹く風なのかもしれない。

気づいていないだけで、儲けの源泉は身近なところに

ゴマンと転がっているものらしい。

ここまで考え方と実例が述べられているので、

本当にドラえもんがとても参考になるのだと分かる。

自分とたいして年も変わらない筆者であるが、

教えてくれたというより、そこから掴めたセンスがまた素晴らしい。

あとここに掲載されていたのび太の起業家マインド名言をぜひともここで紹介したい。


「どんな事業でも最初から上手くはいかない。

この飛行機の本当のよさがわかれば、客は自然とつめかけてくる」


ここには新しいビジネスで最も重要なことは成功するときまで

決してあきらめないことであるという大事な気持ちが現れている。

これは本業以外の何かで収入の柱を増やすという大真面目な

取り組みにも通じるのではないだろうか。

まさにデキる21世紀型人間として大成するにはのび太のような

常識にとらわれない柔軟な発想と行動力をモノにしなければならないと思う。

今まで読書を続けてきて学んできたことである、

使えないものを使えるように、今できないなら

できるようにするためにはどうしたらいいか考える、

そんなビジネスマインドの復習に役立つので

これからも末永く手元に置いておきたい、言うまでもなく必読の一冊である。