日本人は「ものづくり」という言葉を好みます、
それは、おっしゃる通りだと思います。
そうやって日本の製造業は盛り上がって、
経済成長してきたからである。
そもそもマーケットデザインとは何かという疑問があるが、
これは「経済学的ものづくり」に関する立派な学問なんだという。
まず優れた製品を作ったり改良する、理工学的ものづくりという概念があって、
その優れたものを有効活用してくれる人の手にどうやって渡すか、
その製品としての価値を生み出し社会を豊かにするか、
ということを考えるのが経済学的ものづくりの概念である。
その具体例として取り上げられているのが腎移植マッチングと学校選択マッチングである。
腎移植マッチングでは組み合わせのアルゴリズムについて、かなり詳細に解説している。
これは複数の腎臓病の患者とドナー達の中から血液型の適合性の観点で
適合ペアを作り出すというものである。
驚いたことにこれは当たり前に行われているのかと思っていたのだが、
ドナーを交換するという発想は画期的発明レベルなんだという。
そして、91年に世界で初めて行われたのだそうだ。
その後、99年には移植した腎臓の生着率が高いことを
とりまとめた論文が学術誌に掲載されたようである。
当初はマッチする組み合わせることを考えなかったとは、実に謎めいている。
次に、学生寮の今住んでいる部屋より、望ましい部屋を選ぶアルゴリズムについて、
こちらも非常に長々と解説されている。
ちなみにこのアルゴリズムはゲールによるTTCアルゴリズムという。
これによって求められる解は、強コア配分といって、バランスよくみんなが
満足できる結果になるとのことだ。
さらに続いて大学入学と男女のマッチングについて別のアルゴリズムを
これまた詳細に解説している。
ここまでアルゴリズムの話が本当に長く続くので、
難易度が高く飽きてきてしまうかもしれない。
そんな時はオークション理論の所までスキップすることをおススメである。
あとがきでおもしろいのが、犬と暮らすのにあんなにお金がかかるとは
知りませんでした、という一文である。
実際にやってみてわかることだが、犬、猫どちらであっても、その他ペットを飼うということは、
人間の感情を育むとともに、非常にお金のかかるものなのだ。
しかし、マッチング理論とオークション理論ともに総じて言えることは、
学問とはあれこれ様々な仕組みを考え出すものなのだと感心してしまう一冊である。