タイトルからは、電車で表紙が見える状態では
読みたくない本というマイナスイメージを抱くかもしれない。
しかし、カバーなどで表紙を隠すことは著者に失礼である
という、どこかで見た話を真に受けそのまま読み続けた。
それで、内容はどれもかなりおもしろい本であると感じた。
まず、読んでいて何だかこの論調は誰かに似ていると感じた。
森達也氏と森博嗣氏、森繋がりというだけで何ら関係はないが、勝手にそう思った。
彼らはキッチリと言うべき事は指摘する点においては共通するのではないかと思った。
本書は雑誌!?の連載記事まとめらしく、短い記事が盛り沢山という内容になっている。
担当編集者の笠井一暁氏もかなりのキレ者と推測される。
殺人事件の加害者を死刑にするのは、正しい選択であると言えるのか。
また、被害者の人権はどうなるんだ!という怒りの声に対し、
それは違うという至極冷静な意見であった。
被害者や遺族の気持ちを代弁するのではなく、感情に寄り添うことこそが必要なのだとか。
「この人は辛いんだぞ!なんでわかってやらないんだ」と第三者の気持ちを
代弁することなどできるわけがないなどと、深い話である。
そして死刑制度が被害者遺族のためにあるとするならば、
天涯孤独な人が殺された場合は、その犯人が受ける罰は軽くなっていいのかという質問!
こういう考え方をみると、どうしてもワクワクしてしまうのだ。
これも印象に残っているのだが、領土問題の解決策として譲歩という選択について触れている。
もちろんタダでやるわけではなく利益を分配すれば、少しばかり狭くなったとしても
かまわないというスタンスをとれるのだという。
そして、こういった意見に対しての罵倒が多数あったということも明らかにしている。
ところでネットでの中傷するキーワードとしては、
「このバカ」や「カス」とか「死ね」がダントツで多いようである。
どうにも著者は本当によく誹謗中傷されている節があった。
ブサヨって何だろうと思ってしまった。
ちなみに答えはブサイクとサヨクを合わせた言葉らしい。
ピカチュウ、キティと読ませるキラキラネームの話、スリッパについて篤く語っていたりとか、
市役所での身分証明エピソードとか、原子力安全神話、特別警戒と職質やら、
とにかくたくさんあるテーマについて随所におもしろいところが見受けられ、
ドキュメンタリー映画も見てみようかなどど著者に対して俄然興味が湧いてくる一冊である。