筆者の宣言通り分かりやすく書いてあると思った。
景気対策が不十分だから賃金格差が広がったという理論である。
この賃金格差を表現するキーワードがまた面白く
"男・大・正・長" で反対語は "女・小・非・短"
勘のいい人ならどういうことを意味するかは気づくかもしれない。
答えは男性、大企業、正社員、勤続長⇔女性、中小企業、非正規雇用、勤続短のことだ。
先の方は既得権益の受益者側の立場で、この後の方の属性に当てはまる
労働者の賃金を高くしないと景気は良くならないのだとか。
因みに既にガッツリ稼いでる人の給料がさらに増えても
幸福度にはつながらず、貯蓄のパラドクスとなるらしい。
本書で一番おぉ、成程ねと思ったのが、この理論を軸にした
日本経済を整理した賃金デフレは続く?の図である。
物価下落が企業利益を減らし、雇用悪化、賃金下落、格差拡大につながり
消費不足を引き起こし、更なる物価下落になるをことを表している。
そして、今まで金融緩和で景気回復を目論んできた人は、
この賃金デフレの悪循環の部分を考慮せず、物価下落と
不況というデフレの悪循環を断ち切ることだけにしか
注力してこなかったとの指摘である。
おぅ、それはいいこと言ったんじゃないだろうか。
あとは欧米のほうがパートで働く人が多いというデータとか、
賃金格差がずっと少ないとか意外な事実となる
データを引っ張りだしているのも面白い。
で、分析はいいけど一体どうするのってところが
書いてないなぁと思っていたら、何と最後の方に来ましたよ、
不動産バブルで景気回復大作戦。
まぁ、良いか悪いかは賛否両論なんだろうけども、
アベノミクスの3本の矢よりはよっぽど現実的な話にみえる。
1. 金融緩和から不動産価格を上昇させる
2. 公共事業を都市部に集める
3. 人口を都市部に集めてサービス業を充実させる
だだ、こういうのって国民一人がそう思ってもどうにも
ならんことではないだろうか。
それこそ本書を全国会議員に読ませ、考えさせるような対策をしないと
この国は救われないのでは!?などと思わずにはいられない一冊である。