「私たちは経済に何を期待しているのか」
という質問について考える。
得てして外国人が書いた本の翻訳は退屈な話になっていることが多いと
勝手に思っているが、これは一味違う面白いところがあった。
それは、第一章 GDP 国内総生産の部分の話である。
GDPが上がっていると、経済がよくなっていると考える(実際そうだと思っていた)が、
その中身にはどのような数値で構成されているかを論じているところが非常に興味深かった。
具体的には、環境汚染でペットボトルの水を買うようになることや、
原油流出による莫大な処理費用や法的コスト、犯罪者を取り締まるための費用、
タバコが原因の肺がん治療費などこれらの費用がかかればかかるほど
GDPを押し上げるというのだ。
確かに何かを生産しているという観点ではカウントされてしまう。
また、逆のGDPとして含まれないものもどこか矛盾しているようで面白い。
こちらは原発の災害リスク費用、天然水のままではカウントされないのだが
その水を浄水場が管理するようになると水道料金に転嫁されGDPにプラスになること、
健康のためには欠かせない運動もウォーキングではただの時間の浪費だが、
スポーツクラブへ行けばそれでGDPになるとかである。
あとは、五章 暮らしの不安のヨーロッパでの取り組みを提示してあるところだろうか。
あまりにアメリカの具体的な話ではピンと来ないけれども
そのほかにも順序だって読んでいくことで何か興味が出てくるところがあるかもしれない。
そして、この本のすべてが凝縮されているのが、訳者あとがきである。
何故なら先の「そもそも、経済とは何のためにあるのか」の問いに
答えとして「経済は最大幸福を、最大多数の人々に、できるかぎり長期にわたって
提供するために存在する」とすぐにかいてあるからだ。
GDPが伸びていればいいというものではないのだ。
後世にわたって幸せが享受できるようになっていなければならないと述べている。
様々な事象に対する新たな視点を見出せるようになるための一冊として、
ビジネスマンへの推奨の一冊である。