随分厚い本だと思ったら、あとがきにビジネス書に
換算すると2冊分のボリュームと書いてあった。
しかし、構成が一般のビジネス書とは異なり、
現場を描いたストーリィ形式だったので、読み進めるうちに
どんどん続きが気になってしまい、一日のスキマ時間を全て
駆使して一気に読めた。
あらすじは、紳士服チェーンの若手営業マンが、経営幹部がいた
朝礼で現状の給与制度の問題点について空気を読まずに発言してしまったことから、
経営企画室という部署に飛ばされるも、そこで出会った素晴らしい上司と、
その知り合いである敏腕コンサルタントの二人によって支えられ、
会社を改革しながら成長して行くというストーリィである。
そもそも組織とは、分業のため仕事の責任範囲を明確にするためつくられたものとある。
そして事業の成功と成長のためPDCAサイクルを繰り返して行くうえで、
当然トップの考える仕事であった企画も分業して行うことになる。
本書ではこの企画についてとりあげ、重点的に解説していく構成になっている。
なお、重要な部分は太字になっているのでそこはキッチリと押さえておきたい部分である。
企画の定義について紹介すると、
「目的を明確にし、現状を把握したうえで、そこから、目的達成のための意味合いを抽出し、
成功のための仮説を立て、実行案を組み立てるという一連の動作」とある。
これは、たとえば資格を取得するまでの勉強方法であるとか、流行り?のインターネット
ビジネスについての取り組みであるとか、日頃の自分たちの行動についても、自然と
同じプロセスを適用しているのではないかと思った。
また、各章の終わりには、解説としてまとめが載っており、さらに理解が深まると思った。
特に印象的だったのが、PDCAをサボってしまう要因として、
「人、性善なれど、性怠惰なり」があるということだ。
まさに本質を捉えた言葉で、中々自分自身を律するのは難しいことがよく分かる。
ところで、本書ででてきたキーワードの『企業の憑き物落とし』であるが、
憑き物落としといえば、京極夏彦氏の小説の安楽椅子探偵京極堂ではないだろうか。
結局、京極堂も最後は表舞台に登場するが、今回の経営コンサルタント(兄)も同様、
最後には出張って、紳士服チェーンに潜む数々の問題を名探偵ぶり!?を発揮し、
解決していくのであった。
本来、もう少し前の部分から登場するのかと思いきや、まさかの経営コンサルタント(妹)が
登場するという驚きの展開である。
話の流れから兄の秘書兼家事手伝いみたいな位置づけかと思っていたが、
主人公同様おおいに裏切られた部分である。
そして彼らの活躍で新規事業も大成功に終わり、この紳士服チェーンの経営は
見事建て直されたのであった。
ただ、最後の主人公と経営コンサルタント(妹)との怪しい雰囲気の件があると
またも続きが気になってしまい、個人的にはない方がスッキリ大団円だったような
気がして仕方がない一冊である。