2014年6月25日水曜日

戦略参謀 経営プロフェッショナルの教科書、という本を読んだ。


随分厚い本だと思ったら、あとがきにビジネス書に

換算すると2冊分のボリュームと書いてあった。

しかし、構成が一般のビジネス書とは異なり、

現場を描いたストーリィ形式だったので、読み進めるうちに

どんどん続きが気になってしまい、一日のスキマ時間を全て

駆使して一気に読めた。

あらすじは、紳士服チェーンの若手営業マンが、経営幹部がいた

朝礼で現状の給与制度の問題点について空気を読まずに発言してしまったことから、

経営企画室という部署に飛ばされるも、そこで出会った素晴らしい上司と、

その知り合いである敏腕コンサルタントの二人によって支えられ、

会社を改革しながら成長して行くというストーリィである。

そもそも組織とは、分業のため仕事の責任範囲を明確にするためつくられたものとある。

そして事業の成功と成長のためPDCAサイクルを繰り返して行くうえで、

当然トップの考える仕事であった企画も分業して行うことになる。

本書ではこの企画についてとりあげ、重点的に解説していく構成になっている。

なお、重要な部分は太字になっているのでそこはキッチリと押さえておきたい部分である。

企画の定義について紹介すると、

「目的を明確にし、現状を把握したうえで、そこから、目的達成のための意味合いを抽出し、

成功のための仮説を立て、実行案を組み立てるという一連の動作」とある。

これは、たとえば資格を取得するまでの勉強方法であるとか、流行り?のインターネット

ビジネスについての取り組みであるとか、日頃の自分たちの行動についても、自然と

同じプロセスを適用しているのではないかと思った。

また、各章の終わりには、解説としてまとめが載っており、さらに理解が深まると思った。

特に印象的だったのが、PDCAをサボってしまう要因として、

「人、性善なれど、性怠惰なり」があるということだ。

まさに本質を捉えた言葉で、中々自分自身を律するのは難しいことがよく分かる。

ところで、本書ででてきたキーワードの『企業の憑き物落とし』であるが、

憑き物落としといえば、京極夏彦氏の小説の安楽椅子探偵京極堂ではないだろうか。

結局、京極堂も最後は表舞台に登場するが、今回の経営コンサルタント(兄)も同様、

最後には出張って、紳士服チェーンに潜む数々の問題を名探偵ぶり!?を発揮し、

解決していくのであった。

本来、もう少し前の部分から登場するのかと思いきや、まさかの経営コンサルタント(妹)が

登場するという驚きの展開である。

話の流れから兄の秘書兼家事手伝いみたいな位置づけかと思っていたが、

主人公同様おおいに裏切られた部分である。

そして彼らの活躍で新規事業も大成功に終わり、この紳士服チェーンの経営は

見事建て直されたのであった。

ただ、最後の主人公と経営コンサルタント(妹)との怪しい雰囲気の件があると

またも続きが気になってしまい、個人的にはない方がスッキリ大団円だったような

気がして仕方がない一冊である。





2014年6月19日木曜日

イノベーションは新興国に学べ! カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力、という本を読んだ。



イノベーションとは、先進国から起こるものではないのか、

そんな思いがありながらも、一体その根拠は何だろうかと

思いつつも借りてみた本である。



表紙を開くと、いきなりカルロス・ゴーン氏の刺激的かつ

心躍る一冊という推薦文があって、それはもう期待大である。

ビジネスにおいてアイデアと創造力は何よりも重要である。

今や何に使うんだというものや、一見こんなものがと思ってしまうモノを

少しの工夫を付け加えるだけで立派なビジネスとして成り立つ例は多数ある。

それを展開するべく本書でいう新興国とは具体的にはフィリピン、インド、ブラジル、

中国、ケニアなどが挙げられる。

そして再三出てくるジュガードという言葉、パッと読んだだけだと

ジュガードイノベーション、ジュガードイノベーター、一体何の事かが分からない。

新しい取り組みを始めた第一人者の名前か何かだろうか?

答えはヒンディー語で「革新的な問題解決の方法」とか

「独創性と機転から生まれる即席の解決法」という意味があるようだ。

リーダーの即断即決とでも捉えればいいのだろうか。

このジュガードをビジネスに取り入れるときに先進国が学ぶべき6つの原則と

いうのが紹介されているので、ここでも挙げておきたい。

1.逆境を利用する

2.少ないものでより多くを実現する

3.柔軟に考え、迅速に行動する

4.シンプルにする

5.末端層を取り込む

6.自分の直感に従う

の6つである。

これは、特にあまりビジネスマインドが身についていない者がこれを考えると

4番でいきなり難しく考えすぎて高いハードルにチャレンジしたり、

6番あたりで間違った選択をしてしまいそうである。

事実そうかもしれない、直感に従ってみるとだいたい間違っているのが大きい気がする。

だが、ここではそのひとつひとつを実例とともに優れた点を説明しているので、

確かにヒントは掴みとることができそうである。

安く失敗し、早く失敗し、何度も失敗する。

実験実験、また実験。

うまくいきそうもないことが分かったらすぐに別の方法を試してみる。

さらに進んで色々な方法を試してみる。

要するにこだわりすぎて時間がかかってしまった挙句、

成果が出ないとか、期待値よりもずっと低いということは避けたいという思いだ。

そういえば最近思い当たる節があったような気がするので、

これは自分には戒めとしてとどめておきたい点である。

そういうわけで、やはり思うのが、日本国内という狭い枠だけでなく

世界を相手にビジネスモデルを展開し、成功へと繋げていく必要を強く感じさせる一冊である。



イノベーションは新興国に学べ! ―カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力

2014年6月12日木曜日

「自分の子どもが殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい 正義という共同幻想がもたらす本当の危機、という本を読んだ。



タイトルからは、電車で表紙が見える状態では

読みたくない本というマイナスイメージを抱くかもしれない。

しかし、カバーなどで表紙を隠すことは著者に失礼である

という、どこかで見た話を真に受けそのまま読み続けた。

それで、内容はどれもかなりおもしろい本であると感じた。

まず、読んでいて何だかこの論調は誰かに似ていると感じた。

森達也氏と森博嗣氏、森繋がりというだけで何ら関係はないが、勝手にそう思った。

しかし、それがどこかおかしいと思いつつも、そのままにされている世間一般の事柄に対し、

彼らはキッチリと言うべき事は指摘する点においては共通するのではないかと思った。

本書は雑誌!?の連載記事まとめらしく、短い記事が盛り沢山という内容になっている。

担当編集者の笠井一暁氏もかなりのキレ者と推測される。

殺人事件の加害者を死刑にするのは、正しい選択であると言えるのか。

また、被害者の人権はどうなるんだ!という怒りの声に対し、

それは違うという至極冷静な意見であった。

被害者や遺族の気持ちを代弁するのではなく、感情に寄り添うことこそが必要なのだとか。

「この人は辛いんだぞ!なんでわかってやらないんだ」と第三者の気持ちを

代弁することなどできるわけがないなどと、深い話である。

そして死刑制度が被害者遺族のためにあるとするならば、

天涯孤独な人が殺された場合は、その犯人が受ける罰は軽くなっていいのかという質問!

こういう考え方をみると、どうしてもワクワクしてしまうのだ。

これも印象に残っているのだが、領土問題の解決策として譲歩という選択について触れている。

もちろんタダでやるわけではなく利益を分配すれば、少しばかり狭くなったとしても

かまわないというスタンスをとれるのだという。

そして、こういった意見に対しての罵倒が多数あったということも明らかにしている。

ところでネットでの中傷するキーワードとしては、

「このバカ」や「カス」とか「死ね」がダントツで多いようである。

どうにも著者は本当によく誹謗中傷されている節があった。

ブサヨって何だろうと思ってしまった。

ちなみに答えはブサイクとサヨクを合わせた言葉らしい。

ピカチュウ、キティと読ませるキラキラネームの話、スリッパについて篤く語っていたりとか、

市役所での身分証明エピソードとか、原子力安全神話、特別警戒と職質やら、

とにかくたくさんあるテーマについて随所におもしろいところが見受けられ、

ドキュメンタリー映画も見てみようかなどど著者に対して俄然興味が湧いてくる一冊である。





2014年6月3日火曜日

世界で一番わかりやすいニッポンの論点10、という本を読んだ。



前回読んだ規制改革の本と若干内容が被っている部分もあり、

復習という意味でも問題の再認識に役立つ。

アベノミクスとは、結局オーソドックスな金融政策・財政政策を

やっているだけだという。



果たして、デフレ脱却で日本経済は甦るのかどうか。

それにしても結果が出るまでの2年待ちは長い。

本当に景気が回復したと実感できるか、それとも消費税増税によって、

またもや逆戻りとなるのか、何が正解なのかという結果はやってみないと誰にも分からない。

それはさておき、論点を読みながらも興味深いと思ったところを挙げておく。

まず激しく同意の格付けの話がある。

日本国債に不安はない、格付け機関の格下げに慌てるなとある。

確かに、格付け機関が何を根拠に日本の評価をしてるんだろうかという点は

ずっと疑問に思っていた。

やはりそれほど価値のある情報でないという認識は正しそうだ。

どうも報道に踊らされている感があるような気がしている。

そして次に、ここでも出た、医薬品のネット販売についての規制改革の話。

この本によると基本的には諸外国では認められているという。

ネット販売はトレーサビリティが高いため、万が一の不具合対応もできることから

対面にないメリットがあるのだとか。

但し、購入者と使用者が異なることもあるだろうから、その場合は

どうなるかは気になるところではある。

さらに、本書の中で在り方に疑問を感じたのが、電力問題の既得権益の話である。

日本の電気料金は、燃料費や人件費など費用に報酬を加えて設定する

総括原価方式なので、諸外国と比べて割高なのだという。

よって地域独占で原発を作れば作るほど電力会社が儲かるという

おかしな仕組みが成り立ってしまうのだ。

天下りに腐心する官僚がそうさせている、許しがたい事実である。

イザとなったら電気料金を値上げすればいいなどという理屈はあり得ない。

電力自由化はぜひとも実施しなければならない改革の一つのようだ。

あと意外な事実として知った日本の領土は世界61位なのに、

排他的経済水域を含む管轄海域面積が6位というのがある。

それだけ広いなら何か資源が取れそうなものだが、などと思ってしまう。

そんなわけで、日本の論点10個それぞれに対して

問題解決がいち早く求められていると感じる一冊である。